第59章

樋口浅子はその馴染みのある声を聞いて、全身が震えた。一瞬、頭の中が真っ白になった。

これは……

相澤裕樹の声!

彼女は勢いよく目を見開くと、神々しいほどの高い背丈に、悪魔のような危険な気配を纏った姿が洞窟に入ってくるのが見えた。

樋口浅子は鼻が詰まるような感覚に襲われ、目に涙が浮かんだ。

彼女の救援メッセージを理解してくれたのだ。

そして見捨てることもなかった。

三人の誘拐犯は声を聞いて、同時に洞窟の入口へ振り向いた。

見知らぬ男が洞窟に入ってくるのを見ると、彼らの顔色が一変し、目つきが一瞬で凶暴になった。

「お前は何者だ?」誘拐犯のリーダーが厳しい声で問いただした。

相...

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